『ソフィア』
その名を、初めて桜野の口から聞いたのは、いつだったか。
たぶん、合宿の前だ。
その日、桜野は私の部屋で、ごろごろ漫画を読んでいた。
私は桜野の存在を完全に無視して、パズルゲームに興じていた。
無言の部屋に、明るい電子音が響く。
私は、存分に、持ち前の集中力を発揮していた。
ふと気が付くと、桜野がいつの間にか無言で私の隣に座っていた。
体育座りだった。
そして、なんだか、やたらと近かった。
「……レイン、『ソフィア』って知ってる?」
桜野は、視線をテレビ画面に注いだまま、ぼそっと口を開いた。
私は仕方なくゲームを中断して、桜野に向き直りつつ距離をとった。
「『ソフィア』、ですか? なんですか、それ」
「んーと、組織、かな。なんというか、……うん、心優しき人々」
桜野の口調は、歯切れが悪かった。
目は相変わらず、止まった画面に固定されていた。
心優しき人々。
その言葉が、私の中でこだまする。
こころやさしきひとびと。
「レインは『ソフィア』の一員になる資格があると思う。……うん。今度、ターゲットが決まったら、またそのときに説明する」
そう言うと、桜野は一方的にその話題を終わらせ、玄関から帰っていった。
唐突に、一人になった部屋の中。
私は、最後にちらっと一瞬だけ私の顔を見た桜野の表情を、じんわりと引きずっていた。
その表情が、なんというか、いつもの桜野らしからぬものだったから、印象に残ったのだった。
口調も、いつもの桜野ではなかった。
……だから、断りそびれた。
心優しき人々。
私は、そんなものに、関わりたくなんてないんだってこと。
だって、桜野と私の共通の性質を考えれば、分かりきったことじゃないか。
『心優しき人々』が、どんな人々なのか。
具体的に何をする組織なのかは、分からない。
でも、根っこの部分は、分かりすぎるほど分かる。
思い込みかもしれない。
……でも、私の中には、静かな確信があった。
桜野が見せた最後の表情。
……あの、こちらを窺うどこか心細そうな桜野の表情を、なかなか頭から消去できなくて。
私は一人唇を噛んだ。
透きとおった、夜の底。(13)を読む。
その名を、初めて桜野の口から聞いたのは、いつだったか。
たぶん、合宿の前だ。
その日、桜野は私の部屋で、ごろごろ漫画を読んでいた。
私は桜野の存在を完全に無視して、パズルゲームに興じていた。
無言の部屋に、明るい電子音が響く。
私は、存分に、持ち前の集中力を発揮していた。
ふと気が付くと、桜野がいつの間にか無言で私の隣に座っていた。
体育座りだった。
そして、なんだか、やたらと近かった。
「……レイン、『ソフィア』って知ってる?」
桜野は、視線をテレビ画面に注いだまま、ぼそっと口を開いた。
私は仕方なくゲームを中断して、桜野に向き直りつつ距離をとった。
「『ソフィア』、ですか? なんですか、それ」
「んーと、組織、かな。なんというか、……うん、心優しき人々」
桜野の口調は、歯切れが悪かった。
目は相変わらず、止まった画面に固定されていた。
心優しき人々。
その言葉が、私の中でこだまする。
こころやさしきひとびと。
「レインは『ソフィア』の一員になる資格があると思う。……うん。今度、ターゲットが決まったら、またそのときに説明する」
そう言うと、桜野は一方的にその話題を終わらせ、玄関から帰っていった。
唐突に、一人になった部屋の中。
私は、最後にちらっと一瞬だけ私の顔を見た桜野の表情を、じんわりと引きずっていた。
その表情が、なんというか、いつもの桜野らしからぬものだったから、印象に残ったのだった。
口調も、いつもの桜野ではなかった。
……だから、断りそびれた。
心優しき人々。
私は、そんなものに、関わりたくなんてないんだってこと。
だって、桜野と私の共通の性質を考えれば、分かりきったことじゃないか。
『心優しき人々』が、どんな人々なのか。
具体的に何をする組織なのかは、分からない。
でも、根っこの部分は、分かりすぎるほど分かる。
思い込みかもしれない。
……でも、私の中には、静かな確信があった。
桜野が見せた最後の表情。
……あの、こちらを窺うどこか心細そうな桜野の表情を、なかなか頭から消去できなくて。
私は一人唇を噛んだ。
透きとおった、夜の底。(13)を読む。





こんばんは。で、遅れましたが、お帰りなさい。
『透きとおった、夜の底。』、
カテゴリ作ってくださいとお願いしようかと思っていたら、
既に出来てたのですね。(笑
無意味なコメントで失礼しました。
桜野のたくらみとしたら、ソフィアは「桜野に」優しくする人々ではないのかな。
どうなるか?ふぁぶい。
>Don さん
こんばんはー。
一応、無事帰ってきました。
カテゴリは、FC2の不具合か、何回作っても時々消えるので、なんというかそういうものだと思って下さい(苦笑)
ちゃんと表示されていたら、ラッキー、みたいな。
>銀河系一朗 さん
なんか、とりあえず、君島霧華を登場させるというミッションはクリアしたので、適当に入れてみた回想シーンです(笑)
さて、これからどうなることやら。
続きの9〜ここまで読みました。
私のと違って、こういう風に短く区切ってあると読み進みやすいですね。
私が読解力足りないからかもしれませんが、
まだいまいち、物語の中身が読み取れません;
続きを読んでいく内にわかるよう、がんばります(^^;
盥(たらい)さん、こんにちは。
いや、それは多分まだ、物語の中身が書かれていないからだと思われ。
分からないものを読ませてしまって、すみません……!
連載って、ほんと、難しいです。
普通にやっている方を見ると、尊敬する……。