白い月という球に

思うまま、わがままに。適当に書き連ねる、つくりものたち。 コメント・トラックバック歓迎です♪

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その少女に会うのは、二度目だった。

長く綺麗な黒髪は目を引く。
僕はベンチに腰掛け、無意識にその少女を目で追っていた。
少女は無言で、僕の隣に座った。

「お兄さん、リストラされたの?」
少女は、開口一番そんなことを言った。
「若い人が、こんなところでぶらぶらしていてはダメなのよ?」
なかなか大人びた口を利く。
僕は苦笑した。

「僕は大学生。今は夏休みだから、良いんだ」
よくよく考えれば、夏休みだからといって、毎日公園をぶらぶらしていて良いわけではないのだけれど。
少女は僕のほうをちらっと見て、またすぐに視線を足元に落とした。
「……そう。私はリストラされたのよ」
重々しく、ため息。
いかにも深刻そうだった。

僕は、そんな少女の様子に思わず笑ってしまう。
少女は僕に非難の目を向けた。
「ごめん、ごめん。……それで、誰にリストラされたんだい?」
笑いを噛み殺しながら、尋ねる。
少女はつま先で小石をもてあそびながら、ぽつりと。

「お母さん」

僕は、少女を見る。

「お母さんは、私にリストラだ、って。お父さんは、いつまで経っても迎えに来てくれないの。絶対、迎えに来るからね、って言ったのに」
少女は、それでも泣いてはいなかった。
目にたくさんの涙を溜めて。
それでも泣かなかった。

「……早く大人になりたい?」
空を見る。
「僕は、早く大人になりたかったんだ。昔は、子供ばっかり我慢しなくちゃいけないくて、大人はずるい、って思ってた」
少女は、僕を見る。
黒目がちの瞳は、とても知的だ、と僕は思った。
「でも、大人と子供の境目って、ものすごく曖昧だったんだ」
僕は少女の顔を覗き込む。
「ねえ君、……君はずるい人間には、決してなるな」
少女は、頷きもせず、ただ僕を見ていた。

どれぐらいの間、視線を交わらせていただろうか。
少女はベンチから立ち上がった。
「ねえ、お兄さんは、私が大人になる頃には、どこにいるのかしら?」
少女は前を見ながら、ぽつりとつぶやく。
僕も、つられるように前を見た。

僕は、ただただ、子供の頃感じた大人への果てしない道のりを思った。



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テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学
コメント

読みやすく色々想像できてよかったです。

シンの場合は、
子どもの頃、みんなが大人になりたいと思っているとき、大人になりたいと思ったのだろうか。
よく覚えていない。
でも、今言えることはシンの頭は今でもきっと子どもだ(笑)
もういい年なのに大人になりたくないと思ってる
そもそもシンの頭は
大人ってまだよくわかってないけどね(苦笑)
2007/09/14(金) 14:40:41 | URL | シンΨ #ap6q.jK2[ 編集]

コメント、ありがとうございます~。

私は、子供の頃は「大人になんかなりたくない」って思っていました(笑)
今は、自分が大人になったこと(成人したこと)に対して、だいぶ肯定的です。
やっぱり、自由度が高い。

目に見えない、いろいろなものに束縛されるのが(精神的な意味での)大人ならば、私も子供のままでいい、です(笑)
2007/09/14(金) 17:15:19 | URL | もみじ #KKhd1Ueo[ 編集]
「境界線」
子供はずるい大人の実践をする生き物

 「大人になりたくないね」そういった彼は中学生くらいだった。
 彼はビールの缶を煽り、タバコを吹かした。
 彼は自慢げに自分の腕時計を指差した。
 ブランド物、オークションでも出物のひとつだ。
 そんな彼は、親の金を使って株で一儲け、三ヵ月後にはスカンピンになっていた。

*追記
自分は多分、「いつまでも子どもでいたい」人っぽいです。


2007/09/15(土) 21:47:35 | URL | ぬこ&えふぃ #Tf9aLMeg[ 編集]

確かに、子供は大人の真似をしたがりますね~(笑)
女の子だと、お化粧とかに興味が。

私は、よく雨の日に傘をたくさん使って、「家」を作っていました。
その中で、何時間でも雨の音、雨の気配を感じていられたなぁ……。
(実際には、途中で大人の邪魔が入るわけですが(笑))

2007/09/18(火) 16:31:40 | URL | もみじ #KKhd1Ueo[ 編集]

初めまして。
最近からブログで文を書くようになったイチと申します(^^)
いろいろなブログをとび回っているとここへたどり着きました*

この作品を読んだとき、なんだかとても切なくなりました。
喉の奥がむずがゆい(?)というか…。
私はずっと「子どものままでいたい」と強く思ってるタイプで
それは今現在も変わらず「境界線」の中にいるのですが
大人の汚さを知ってしまうことからは、やはり逃げられないようで
確実に大人へと近付いている気すらします。

子どもの頃に「忘れないでおこう」と思ったことだけは
いつまでも忘れずにいれる大人になりたいものです…。

2007/09/20(木) 18:35:16 | URL | イチ #ssCOKD9A[ 編集]

>イチさん

はじめまして。
ご訪問&コメント、ありがとうございます。

確かに「知る」ことは大人に近づくことに繋がっているような気がしますね。
「諦める」こともそうでしょうか。

>子どもの頃に「忘れないでおこう」と思ったことだけは
>いつまでも忘れずにいれる大人になりたいものです…。
同感です。
難しいのは、そう思った私自身が刻一刻と変化していく宿命にある、ということですね。
子供の頃に軽く軽蔑した人間と同じように振舞っていた自分に気づいたときとか、どうしようもない気持ちになります。

良かったら、また遊びに来て下さいな~。
2007/09/20(木) 20:59:01 | URL | もみじ #KKhd1Ueo[ 編集]
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