白い月という球に

思うまま、わがままに。適当に書き連ねる、つくりものたち。 コメント・トラックバック歓迎です♪

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「夏菜、お菓子と飲み物、お願い」
無駄のない動きで前を進む夏希がこちらを振り返る。
「了解」
わたしは夏希から離れ単独行動に移る。スーパーの中のわたしは、はっきり言って驚くほど無力だ。
ぶらぶらとお菓子コーナーへ向かう。最近めっきりお菓子の値段が上がった気がする。百円で買えるものが少ない。
わたしは両目を左から右、上から下へと動かし、何か心の琴線に触れるものはないかと検分する。右下まで行くと、横歩きで隣の棚に進む。
次第にわたしは焦る。次第に焦っていくわたしを観察するわたしを感じる。握った手のひらの冷たい硬貨の感触が蘇る。
ああ、わたしはこんなにも断絶して。
隣で玩具付きのお菓子を見ていた子供が何事かを叫びながら走りだし、遠くでカートを押す母親に諌められた。
わたしは諦めて酒のつまみに手を伸ばす。
夏希はあまりお菓子をほしがらない子供だった。母親の目を盗んでは、物足りなそうな様子だったろうわたしに、自分のぶんのおやつを回してくれた。
「僕はいらないから」
わたしが夏希からもらったお菓子を食べるところを夏希は楽しそうに見ていた。ときどき母親に見つかって、わたしは怒られた。夏希はわたしをかばい、わたしは自分の無罪を主張した。
そんな姉弟だった。
目の前に海が広がる。海というよりは湖に近いのかもしれない。その水は透きとおって、凍るように冷たい。わたしたち二人を乗せたボートは、その湖の真ん中にぽつんと浮かんでいる。わたしたちを中心に波紋が金属的な音をたてる。濃い青、薄い青がわたしたちを包む。霧は深まり、わたしたちは互いの姿を確認することができない。そのくせ水はどこまでも透明で、どこまでも深く。たくさんのものが沈んでいる。沈んでいたり、漂っていたり流れていたり分解していたりする。わたしたちは、わたしは、ずっと水の中を眺めている。飽きもせずに、ずっと。
ずっと。
ねえ、いつの間に、夏希はボートを降りていた?
買い物かごを取り、ビーフジャーキーを、ポテトチップスを、プルーンを、ラムネを、のしいかを、アーモンドチョコレートを、塩せんべいを、どさどさと入れた。全部買えてしまうのが、少し悲しかった。
背筋を伸ばし、お酒コーナーへと向かう。綺麗に鳴る自分の靴音を聞く。ずらりと並んだ瓶は、なぜかわたしに子供のころ遊んだ人形の家を思い出させた。
思うに、人は大人になってしまったことを忘れたいがために酒を飲むのではないのか。梅酒の瓶にかけた手を一瞬止める。
でも私は、大人の自由さを、もう手放せない。この身体の軽さを、わたしはもう。
瓶の肌をそっと撫でる。そのまま棚からぐいっと引き抜き、自分のかごへと導く。かつて選ばれたかったわたしは、いまや立派に選ぶほうの人間なのだ。


**************

前回の続き。
相変わらず、書きなぐり……。
書き進めたいだけ書き進めて、気が向いたら直します。

なんか、ボートのシーンでやっと、主要キャラ二人の立ち位置が見えてきました。
昔は仲良かったんだねー。



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コメント
お久しぶりです(*^^*)
ご無沙汰している間に、沢山の作品が出ていてびっくりしました。
途中を見るのもいいですね(^^)
これからどんな風に変化していくのだろうとか考えてワクワクします。

頑張ってくださいね~i-237
2008/10/16(木) 00:27:06 | URL | たぬき #osd7LS92[ 編集]

たぬきさん

本当に、お久しぶりです。。。(苦笑)
コメント、ありがとうございますね~。
なんか、元気が出ました。時間差攻撃とは、憎いですね(笑)

これからも、よろしくお願いします。
2008/11/23(日) 22:12:31 | URL | もみじ #KKhd1Ueo[ 編集]
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