白い月という球に

思うまま、わがままに。適当に書き連ねる、つくりものたち。 コメント・トラックバック歓迎です♪

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最近、小説を書いてます。
(↓追記に載せてみる。)

と言っても、まだ原稿用紙10枚ぐらいだけど。
いつもどおり、ほとんどノープランです。
頭の中で決まってることといえば、主要キャラ二人に何を背負わせるか、ってことぐらいか。
これも、かなり大雑把ですが。
そして、書いてる途中なので、体裁も整えてないという、サービス精神のなさ。

で、ちょっと試しにお話の設定やらなんやらを、ブログに公開しながら創っていってみようかな、って。
いや、よくあるじゃないですか、小説ブログで。
正直、そういうのって読んでて面白くないのが多いけど、まぁ、ここも自己満足ブログなので良しとする(笑)

というわけで、そんな感じです。
張り切って、新しいカテゴリも作ってみた(笑)
飽きっぽい性格なので、いつまで続けられるか、わかりませんが。



***********************

ブランコが揺れる。
わたしは空を仰ぎ、湧き上がるように形を変える入道雲を見ていた。誰もいない公園に蝉の声が満ちる。うだる暑さに周りの景色はじいんとして、わたしから遠ざかる。
ブランコを揺らす。
きい、きい、と懐かしい規則的な音。長くなってしまった足がもどかしくて、立ち上がって漕ぐ。今度は高くなった背が邪魔だった。
ため息を一つ。大人しく座る。遠くの入道雲を眺めた。
蝉の声に隔絶されたこの場所と、白く光る獰猛な入道雲の住む空の世界と。それらの間に共通点はあるか、と考える。
遠いところまで来てしまった、と思った。わたしは不意に打ちひしがれた。
空は昔から遠かった。でもブランコの上は遠くないはずだった。それなのに今のわたしにとってはあの入道雲もこの公園も、同じくらいに遠い。その遠さに違いなど見つけられない。
この断絶は何だろう。わたしは自分の前にぽっかりと口をあけた空白に、微かな罪悪感を覚え足元の小石を蹴った。
小石はどこかに飛んで、見えなくなった。


大学の夏休みも三回目となると、慣れたものだ。
無駄に長い間延びした時間を潰す術は、わたしの中にきっちりと組み込まれている。今日は家から少し離れた喫茶店に来て涼みながら本を読む。わたしはここのアイスロイヤルミルクティーが好きだ。
「夏菜ちゃんはお盆、実家に帰った?」
顔を上げると、渋谷くんがエプロンで手を拭きながら向かいの席に腰かけるところだった。焦点が合わない。窓の外を眺めて軽く目を休ませる。
「帰ったよ。昨日、こっちに戻って来た」
本を置きながら答える。いつの間にか、隣のお客さんがいなくなっていた。香水の微かな残り香が鼻を突く。
「良いな。僕も早く帰りたい」
そう言って渋谷くんがあまりに遠い目をするので、少し笑ってしまった。渋谷くんと目が合う。
「言ったっけ? うちの妹、今七歳でさ、かわいいのなんのって! 将来、絶対美人になるよ」
何回も聞いた、とわたしは笑う。
「立派なシスコンだねぇ。 まぁでも渋谷くんがお兄さんだったら良いかも。優しそうだし」
「そうかなぁ、そう思う? あれ、そういえば夏菜ちゃんは、実家には弟さんと一緒に帰ったの?」
弟、という言葉に体がびくりと反応する。油断した。わたしは平静を装って、にっこり笑う。
「んー、今回は別々。夏希はまだ、あっちにいるし」
ミルクティーに刺さった真っ赤なストローを口に含んだ。混濁した茶色い液体が、真っ直ぐにわたしの体に流れ込む。その甘さがわたしに何かを思い出させる。
「じゃあ、そろそろ戻らなきゃ。邪魔してごめんね。どうぞ、ごゆっくり」
渋谷くんはにこっと笑うと、カウンターの向こうの彼の場所へと戻って行った。にやにやした店長さんに肘でつつかれて、照れたように笑う。店長さんと目が合い、軽く会釈する。
わたしは椅子の上で姿勢を正し、読書に戻った。
平和だ、と思う。平和だ。平和な夏休み。わたしはいろいろなものに守られている。海の底の深海魚みたいに守られている。月の光すら届かないそこは、なんて穏やかなんだろう。
窓の外にちらりと目をやる。ガラスの向こうで、停滞した夏の空気がわたしを盗み見る。彼らは羨ましそうに指をくわえている。ふふん、と優越感に浸る。
水の層を乗せたミルクティーをストローでゆっくりとかき混ぜた。氷が涼しげな音をたてる。ミルクティーは均等に薄くなった。わたしはストローを口にくわえ、そして。
そこで停止した。
夏希。
自動で開いた自動ドアから入って来たのは、弟の夏希だった。あわてて顔を背けるも、落ち着いた足音はゆっくりと、しかし確実にこちらへ向かってくる。
どうしよう。何か。何か、手を打たなければ。
一気に頭が覚醒する。ぶわっと汗が全身から発散されるのが分かった。
「夏菜」
非情にも足音はわたしの前で止まり、降って来た声は間違えようもなく夏希のものだった。わたしは自分の手の甲を見る。ぎゅっと握った掌に爪が食い込んで、どこか遠くのほうで痛かった。
「夏菜、ここにいたんだ。少し探しちゃったよ」
夏希は椅子を引き、わたしの向かいの席に腰を下ろした。注文を取りに来た渋谷くんにアイスコーヒーを頼む。夏希はわたしと違ってちゃんとコーヒーが飲めるのだ。
大きく息を吐いて夏希の目を見る。だいぶん落ち着いてきた。
「なんで、ここが分かったの?」
不機嫌そうに色づけされたわたしの言葉。夏希は涼しそうに微笑み小首をかしげて見せる。
「夏菜の行動パターンぐらい読めるよ。生まれたときからの付き合いだからね」
「そう」
わたしはため息をつきながら椅子の背もたれに体を預ける。グラスを手に持ちストローを唇に挟みながら天井で回るファンを眺める。
ファンは一定のスピードで回っているように見える。でも、本当は人知れず遅くなったり速くなったりしてるんだ、きっと。そんな気がする。この世界に厳格なものなんて、ほとんどないんだから。
渋谷くんが夏希の前にアイスコーヒーのグラスを置いた。
夏希は口元に笑みを浮かべたまま、眼鏡の向こうからわたしを見る。わたしは目をそらす。夏希はアイスコーヒーに真っ赤なストローを突き刺し、グラスを手に取る。グラスからテーブルにぽたりと水滴が落ちる。
「もう少しあっちにいる予定じゃなかったっけ?」
わたしの言葉に、夏希はストローをくわえたままちらっとこちらを見る。
「もう少しあっちにいる予定だったよ」
夏菜もそういう予定だったよね、とわたしの顔を覗きこむ。
「なんで戻って来たの?」
「夏菜がいなくなったから。父さんも母さんも心配してたよ、何も言わずに出て行くから。荷物もきれいにないしさ」
それは嘘だと思った。父親も母親もわたしの性格をよく知っている。ついでに言うなら、夏希だってわたしの性格を知りすぎてるぐらい知っているのだ。
「嘘だ、って顔してる。夏菜の生きてる世界はきっと、子供の頃から全然変わってないんだろうね。世界は日々更新されているというのに」
夏希は柔らかく笑う。
「父さんも母さんも二人暮らしは寂しいってさ」
アイスロイヤルミルクティーを体に流し込んだ。底に溜まったガムシロップが甘い。ちょっと邪魔だ。子供の頃は、あんなにも甘いものに恋焦がれていたのに。
そうだ、わたしはこんなに断絶してしまっているのに。
「だったら、もっとあっちにいたら良かったのに。そのほうがきっと、二人も喜んだでしょう? 別に今からでも遅くないし、わたしの無事も確認したんだから、帰ってあげなよ」
声音や首をかしげた仕草で、精いっぱいお姉さんらしさを演出してみる。夏希は笑う。
「いや、二人とも夏菜が一人じゃ心配だってさ。夏休みで学食もやってないだろうし、放っておいたらアパートで餓死するんじゃないか、ってすごい勢いで追い出されたよ」
餓死って、そんな馬鹿な。
「今の時代コンビニだって、ファミレスだって、何でもあるじゃん。そんな、餓死なんて、そんな」
いびつな笑みを口元に張り付けながら、わたしは思わずまくし立てる。淡々と、抑揚なく。夏希は邪気のない笑顔でそんなわたしに対する。
「夏菜も年頃の女の子なんだから、いい加減、自炊できるようになろうね?」
ぴきん、と音がした。わたしと夏希の間にある透明な壁が立てる音。
ああ。
わたしはわずかに浮かせた腰をすとんと下ろした。
ああ、やっぱり夏希なんか大嫌いだ。
ファンは相変わらずくるくるとこちらを見下ろしていた。


夏のスーパーマーケットはどこも、うっとりするぐらい涼しい。
自動ドアから入ったときのにおいも一緒。野菜や果物が眠るにおい。気体になった水のにおい。冷蔵庫のにおい。
きちんと冷やさないと、夜になってトマトやら大根やら西瓜やらが暴れだしてしまうのだ。一度そうなってしまうと、暴動が暴動を呼び手が付けられなくなる。暴風雨みたいなその光景は、しかし、わたしにとってはものすごく魅力的だ。わたしは透明なレインコートを着て観戦する。
わたしはうっとりと、色とりどりの野菜たちがつぶれ、砕け散っていくさまを眺める。死の美しさは、つまり生の美しさなのだということをわたしは知っている。打ち上げ花火みたいなものなのだ。存在意義はすなわち。
「夏菜、お菓子と飲み物、お願い」



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テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学
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