『地球最後の一日。』を小説風味にバージョンアップさせました。
久しぶりにまじめに書いた気がする……。
ちゃんと終わらせるのって、やっぱ大事だなぁと思ったり。
気が向いたら、更なるバージョンアップを。
一字下げ、うまくいってないかも。すみません。
******
『地球最後の一日』
太陽が海の向こうから、ゆっくりと顔を出す。
裏山に登って朝日を見るのなんて何年ぶりだろう。小学生の頃は何かある度にいつも裏山のてっぺんまで登って下に広がる町並みを眺めたものだ。夏休みは毎日と言っていいほど裏山で夜明けを迎えた。
――なんだか、お日様が僕のためだけに昇って来てくれるような気がしたから。
繋いだ右手に力を込める。ぎゅっと握り返される。
僕たちは無言で、新しい太陽を、きらきら光る海を、生まれ育った町を、息を止めて見つめた。
「綺麗ね……」
彼女の言葉に僕はただ頷く。ああ、世界はこんなにも喜びに満ちている。
「ありがとう」
凛とした声。彼女は僕に微笑む。僕も負けじと笑い返す。服が汚れるのも構わず二人して地面に寝転がり空を仰ぐ。
泣くかと思ったのに。悲しいかと思ったのに。
今、僕らはこんなにも満ち足りている。僕たちは、麻痺してしまった? 深い絶望に、頭の線が一本切れたのかもしれなかった。でも、今の僕らにとっては、そんなことどうでも良かった。
空の高いところに白い月がぽっかりと浮かぶ。手を伸ばす。僕たちの足では決して届かない、その遠さを思った。
今日、地球は滅びるらしい。
気づいたときにはもう手遅れだった、と科学者は言った。
その発表はちょうどひと月前、全世界に生放送された。
今でも覚えている。僕は久しぶりに大学時代の友人の家で飲んでいた。サッカーの試合の途中だった。一緒に飲んでいた奴がニヤニヤしながら僕の顔を見る。でも、その瞳は微かな不安に揺れて。
「この地球上の誰も、予測することができなかった。――地球は、ひと月後に滅亡します。それを避ける術を、今の人類は持ち合わせていない」
僕たちは無言だった。
僕はぐるぐると混乱した頭で、ただ、サッカーの試合の行方を気にしていた。きっと、他の奴らも同じようなものだったろう。そこには、現実感というものが全くなかった。欠如していた。
テレビ画面の向こう、他の人が皆どうしようもなく悲痛な面持ちをしている中、最初に発表をした科学者だけは終始静かに微笑んでいた。
友人の家からどう帰ったのか、僕は覚えていない。ただ、時間が経つほどに増していくリアリティが僕らを押し潰していった。僕らは酒をあおった。
その放送の後、例の科学者はメディアに散々、不謹慎だとかで叩かれていたけれど、今の僕は彼の気持ちがなんとなく分かる。僕も大学時代は科学に身を捧げていた人間だから。
この世界の真理を追求したい彼は、同時にこの世界に圧倒されたいと思っている。決して自分にはかなわない、と思い知らせてほしいと思っている……。
あの発表のあった直後こそ、殺人やら強盗やらいろいろ起こったけれど、『その日』が近付くにつれて世界は平穏を取り戻していった。きっと、科学者だけじゃない、世界中の人々が世界に抱かれている感覚、神様が見てくれているという感覚を覚えていたのだろう。
科学信仰は終わりを告げ、人々は言葉にできない、見逃してきた多くのものに価値を見出し始めた。
僕はというと、多くの人の例にもれず発表直後にはかなり荒れた。いろんな人に当たり散らす毎日。会社の上司に向かって「死ね」と言ったこともある。
死にたくなくて、死ぬのが怖くて、布団の中で泣いて、約束されていたはずの未来を思い描いては絶望に打ちのめされ、やり場のない怒りに拳を震わせた。浴びるほど酒を飲んだ。
でも、ふとした瞬間に、思い出したのだ。
小学生だった頃の僕を。かつて、確かに存在した僕を。ここではない、どこかに焦がれていた僕を。
「もしも、あと一年の命だったら、きっとそのまま普通に生活するだろうな」
「もしも、あと三ヵ月の命だったら、お年玉の貯金を使って欲しいおもちゃを好きなだけ買おう……」
「もしも、あと一日の命だったら……」
あの頃の僕はいつだって、空想の翼をはばたかせて現実を見ないようにしていた。それは無意識だったけど、無意識だったからこそ、すぐ隣にあった死線に引っ張られることもなかった。
あの頃の僕には、繰り返していく灰色の日々が永遠に続いていくように思われたんだ。逃げ道なんてなかった。ただ、周りの何もかもが僕への興味をなくしてどこかに行ってくれればいいのに、ってそればかりを考えた。
明日が来ないようにと祈りながら眠りにつく毎日。自分が大人になる日が来るなんて、想像もつかなかったんだ。
今、ここに子供の頃の僕がいたら、この状況に間違いなく目を輝かせていたことだろう。周りの大人たちに「ほんと? ほんと?」と聞いて回ってうるさがられただろう。
それに対して、今の自分はどうだ? 死にたくない、死にたくない、ってまるで子供みたいに駄々をこねて。精神年齢、下がったんじゃないか? あの頃の僕に笑われるぞ。
――でも、ああそうか、って。
呆れたのと同時に思ったんだ、ああそうか、ぼくは幸せになったんだ、って。死にたくないと思うぐらい、幸せに。
その瞬間、世界は色を取り戻した。むしろ、前より鮮やかなくらいだった。
僕は笑いながら泣いた。
昇り切った太陽が、じりじりと僕らを焼く。
繋いだ手は汗ばんで、もはやどちらの汗かなんて区別もつかない。半袖の腕にくっついた砂だって、もう僕の一部かも知れなくて。
地球は、回る。
彼女が僕の頬をつつく。僕もつつき返す。僕たちは笑いながら転げ回る。きっと頭の線はすでに何本も切れているんだろう。手遅れだ。だからなんだって言うんだ。
終わりがあるからこその、幸せを。
久しぶりに連絡を取った母親は苦笑して、なんとか用意しておくから帰ってくれば、と小さく言った。声が震えていたことには気づかないふりをしよう。どんな顔をして迎えてくれるんだろう。
「もしも、あと一日の命だったら……、桃の缶詰を百個食べたいです!」
どこかで、僕が笑った気がした。
久しぶりにまじめに書いた気がする……。
ちゃんと終わらせるのって、やっぱ大事だなぁと思ったり。
気が向いたら、更なるバージョンアップを。
一字下げ、うまくいってないかも。すみません。
******
『地球最後の一日』
太陽が海の向こうから、ゆっくりと顔を出す。
裏山に登って朝日を見るのなんて何年ぶりだろう。小学生の頃は何かある度にいつも裏山のてっぺんまで登って下に広がる町並みを眺めたものだ。夏休みは毎日と言っていいほど裏山で夜明けを迎えた。
――なんだか、お日様が僕のためだけに昇って来てくれるような気がしたから。
繋いだ右手に力を込める。ぎゅっと握り返される。
僕たちは無言で、新しい太陽を、きらきら光る海を、生まれ育った町を、息を止めて見つめた。
「綺麗ね……」
彼女の言葉に僕はただ頷く。ああ、世界はこんなにも喜びに満ちている。
「ありがとう」
凛とした声。彼女は僕に微笑む。僕も負けじと笑い返す。服が汚れるのも構わず二人して地面に寝転がり空を仰ぐ。
泣くかと思ったのに。悲しいかと思ったのに。
今、僕らはこんなにも満ち足りている。僕たちは、麻痺してしまった? 深い絶望に、頭の線が一本切れたのかもしれなかった。でも、今の僕らにとっては、そんなことどうでも良かった。
空の高いところに白い月がぽっかりと浮かぶ。手を伸ばす。僕たちの足では決して届かない、その遠さを思った。
今日、地球は滅びるらしい。
気づいたときにはもう手遅れだった、と科学者は言った。
その発表はちょうどひと月前、全世界に生放送された。
今でも覚えている。僕は久しぶりに大学時代の友人の家で飲んでいた。サッカーの試合の途中だった。一緒に飲んでいた奴がニヤニヤしながら僕の顔を見る。でも、その瞳は微かな不安に揺れて。
「この地球上の誰も、予測することができなかった。――地球は、ひと月後に滅亡します。それを避ける術を、今の人類は持ち合わせていない」
僕たちは無言だった。
僕はぐるぐると混乱した頭で、ただ、サッカーの試合の行方を気にしていた。きっと、他の奴らも同じようなものだったろう。そこには、現実感というものが全くなかった。欠如していた。
テレビ画面の向こう、他の人が皆どうしようもなく悲痛な面持ちをしている中、最初に発表をした科学者だけは終始静かに微笑んでいた。
友人の家からどう帰ったのか、僕は覚えていない。ただ、時間が経つほどに増していくリアリティが僕らを押し潰していった。僕らは酒をあおった。
その放送の後、例の科学者はメディアに散々、不謹慎だとかで叩かれていたけれど、今の僕は彼の気持ちがなんとなく分かる。僕も大学時代は科学に身を捧げていた人間だから。
この世界の真理を追求したい彼は、同時にこの世界に圧倒されたいと思っている。決して自分にはかなわない、と思い知らせてほしいと思っている……。
あの発表のあった直後こそ、殺人やら強盗やらいろいろ起こったけれど、『その日』が近付くにつれて世界は平穏を取り戻していった。きっと、科学者だけじゃない、世界中の人々が世界に抱かれている感覚、神様が見てくれているという感覚を覚えていたのだろう。
科学信仰は終わりを告げ、人々は言葉にできない、見逃してきた多くのものに価値を見出し始めた。
僕はというと、多くの人の例にもれず発表直後にはかなり荒れた。いろんな人に当たり散らす毎日。会社の上司に向かって「死ね」と言ったこともある。
死にたくなくて、死ぬのが怖くて、布団の中で泣いて、約束されていたはずの未来を思い描いては絶望に打ちのめされ、やり場のない怒りに拳を震わせた。浴びるほど酒を飲んだ。
でも、ふとした瞬間に、思い出したのだ。
小学生だった頃の僕を。かつて、確かに存在した僕を。ここではない、どこかに焦がれていた僕を。
「もしも、あと一年の命だったら、きっとそのまま普通に生活するだろうな」
「もしも、あと三ヵ月の命だったら、お年玉の貯金を使って欲しいおもちゃを好きなだけ買おう……」
「もしも、あと一日の命だったら……」
あの頃の僕はいつだって、空想の翼をはばたかせて現実を見ないようにしていた。それは無意識だったけど、無意識だったからこそ、すぐ隣にあった死線に引っ張られることもなかった。
あの頃の僕には、繰り返していく灰色の日々が永遠に続いていくように思われたんだ。逃げ道なんてなかった。ただ、周りの何もかもが僕への興味をなくしてどこかに行ってくれればいいのに、ってそればかりを考えた。
明日が来ないようにと祈りながら眠りにつく毎日。自分が大人になる日が来るなんて、想像もつかなかったんだ。
今、ここに子供の頃の僕がいたら、この状況に間違いなく目を輝かせていたことだろう。周りの大人たちに「ほんと? ほんと?」と聞いて回ってうるさがられただろう。
それに対して、今の自分はどうだ? 死にたくない、死にたくない、ってまるで子供みたいに駄々をこねて。精神年齢、下がったんじゃないか? あの頃の僕に笑われるぞ。
――でも、ああそうか、って。
呆れたのと同時に思ったんだ、ああそうか、ぼくは幸せになったんだ、って。死にたくないと思うぐらい、幸せに。
その瞬間、世界は色を取り戻した。むしろ、前より鮮やかなくらいだった。
僕は笑いながら泣いた。
昇り切った太陽が、じりじりと僕らを焼く。
繋いだ手は汗ばんで、もはやどちらの汗かなんて区別もつかない。半袖の腕にくっついた砂だって、もう僕の一部かも知れなくて。
地球は、回る。
彼女が僕の頬をつつく。僕もつつき返す。僕たちは笑いながら転げ回る。きっと頭の線はすでに何本も切れているんだろう。手遅れだ。だからなんだって言うんだ。
終わりがあるからこその、幸せを。
久しぶりに連絡を取った母親は苦笑して、なんとか用意しておくから帰ってくれば、と小さく言った。声が震えていたことには気づかないふりをしよう。どんな顔をして迎えてくれるんだろう。
「もしも、あと一日の命だったら……、桃の缶詰を百個食べたいです!」
どこかで、僕が笑った気がした。
テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学





小説バージョンになると、また雰囲気変わりますね〜
とても面白かったです(*^^*)
桃缶は百個も食べれません。(違)
もみじさんらしい文章だな。っていうのが、第一印象かな。
私も本格的に書いてみようかな。『地球最後の日』を。
百個も食べたらお腹を壊します。(←しつこい)
>たぬきさん
コメントありがとうございます〜。
雰囲気変わりました?
だいぶん情報が追加されました(笑)
しかし、書きあがったのを読むと、いろいろと書き込むべきところが見えてきますね。
>たろすけ(すけピン)さん
たぶん、完食する前に地球は滅びちゃうから、大丈夫ですよー(笑)
たろすけ(すけピン)さんも、ぜひ書いてみるべし。
何事もそうだと思いますが、小説書きも真剣に取り組むほど、得られるものは大きいです。たぶん。
新海誠監督でアニメ化決定。
身体性、皮膚感覚を通して世界を獲得するという話は大好きです。
彼は「腕にくっついた砂だって、もう僕の一部」という認識にまで到達できたからこそ、地表に乗っかってる全てのものを自分と不可分なものとして肯定的に向き合うことができたのでしょう。
ひょっとしたら現状が幸せだったから裏山を介在してカタルシスを達成できたのかも知れませんが、いずれにしろ彼にとって世界の終わりが因果関係としての肉体の死以上の意味を帯びるようになったのは祝っていいことだと思います。
それにしても「僕」が食べるべき桃は缶詰なんかじゃなくて、彼女ちゃんの方だと思います。
>そこでねこがさん
コメント、ありがとうございますー。
うーん、なるほどー、という感じです。
書いているときはあまり物を考えていないので、そうやって分析してもらうとそうなんだなぁ、といろいろ面白かったです(笑)
多分、つらい子ども時代があったからこそ「僕」は前向きに死と向き合うことができた、っていうのが私の書きたかったことの一つだったんじゃないかなぁ、と思います。
マイナスだと思われることも、それをマイナスのまま大事に保管しているのは自分なわけで、いくらでもひっくり返すチャンスはあるというか……。
しかし、いつものことですが、普段考えていることをがしがし作品に詰め込んでしまったので、ちょっとごちゃごちゃしてますね……。
最後の一文が、そこでねこがさんですよねぇ(笑)
最後の日となれば、殆どの人類は家族と食べたいものを食べ、淡々とすごすでしょうね。
だから、最後の日だけど、なんとかなるかもという甘めの設定が映画なんかの作り方ですね。
>銀河系一朗さん
なんとかなっちゃったら、ロマンがないですよー。
私は最後の日に、何を食べよう……。
え、新海誠さんが監督になるのですか??
ぜひ見なくては!! いちファンなのに見逃しておりました!
情報ありがとうございます!
>流雨さん
いやいやいや。
ならないと思いますよー(笑)
流雨さんって、素直な方なんですね。
ネット上ではなかなか珍しいかも。
どうか、これからもそのままで。(余計な御世話かもしれませんが……(笑))
シンはみかんの缶詰が良い!(違
まぁ、シンは本当にあと1日ってわかったら、世界がキャーキャー言ってるのを傍目で楽しんでるような気がする。
楽しんだ後はボーっと空を眺めて
あれだな。ここで、『俺の人生もまんざらじゃなかったな』って言うのかな。まぁ、「満足だ」が、良いから、頑張ろうット!
って、全然感想じゃないやw
みかんも、パイナップルも捨てがたいですねー(笑)
最後の日、私はなにするかな……寝だめ?
(それは、今したいことだ……)