白い月という球に

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「見て。夜が明ける」
空と地平線との境界を割って、この世界に再び太陽が姿を現す。
僕はまぶしさに目を覆った。
まぶたの裏で生まれたばかりの太陽が残像となって踊る。
「今日が始まるわ」
熱っぽくささやくリカは、きっとこの光の中でも目を凝らしているのだろう。
分厚い硝子に、額を押し付けて。
光が身体を温める。僕はゆっくりと目を開けた。
真っ黒な空の下、僕たちの住む街が灰色に広がっていた。
「見て」
彼女の指差す先に、青い星。
「綺麗……」
人類が宇宙に進出して300年。『月』に住む僕らはあの青い『地球』に恋焦がれる。
それはきっと、僕らの祖先がまだ『地球』に住んでいたころより、ずっと切実に。
僕はそっとリカの横顔を盗み見た。
彼女は今日旅立つ。彼女は鳥になるのだ。
「リカ・ヒグチ、時間です」
リカはちらっと後ろを見て、無言で窓から離れる。と、僕のほうに右手を伸ばした。
「手、出して」
僕は言われたとおりに両手をリカのほうに差し出す。
リカは眉間に軽くしわを寄せて、口の中で小さく何事かをつぶやいた。
リカの右手にじんわりと光が宿る。
ぽん、と現れたのは……チョコレート? それは、ひとかけらのチョコレートだった。
「リカ」
「大丈夫、許可は取ってある。……昔、『日本』では2月14日に友情の証としてチョコレートを贈り合ったらしいの。だから、」
僕たちは数秒の間、無言で見つめ合った。
「……僕たちの友情は、永遠だ」
僕の言葉に、リカは口をきっ、と結んで頷いた。

そうして、彼女は旅立った。もう二度と会うことはないだろう。
……リカは、僕が『日本』の歴史に通じていることを、知らなかった。
バレンタインデーのチョコレート、その意味は。
「僕も、君が、好きだよ」
飲み込んだ告白の言葉をそっとつぶやく。
柔らかい甘さが口の中でほどけた。

空には、青い星。






『みんなで、物語を紡ごう!』コミュより転載。

・チョコレート
・2月14日
・告白
のお題で書いたもの。

これは確か、題名を先に思いついて、そこからお話を作った。
なんとなく、SFっぽい題名だ、ということでSFっぽい話にチャレンジしてみたけど、
かなり難航して、「SF書くにはSF読まなきゃ!」と思ったり。
結局、SFだかなんだか、よく分からない話になりましたとさ。

加えて、これを書いた当時、
私は、バレンタインデーのイベントが外国から輸入されたものだということを
知りませんでした……(苦笑)
その意味でも、微妙なラインをねらった話になってしまった。

いろいろ穴がありそうですが、それでも結構好きだったりします(笑)


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テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学
コメント

ロマンチックで切ないお話ですね。

彼らの背景を色々と想像させられました(^^)
2008/02/22(金) 10:39:48 | URL | たぬき #osd7LS92[ 編集]

彼らの背景は……ほとんど考えていません。
まぁ、はりぼて、です(笑)

しかし、ちゃんと設定組める人になりたいな……。
2008/02/22(金) 18:03:35 | URL | もみじ #KKhd1Ueo[ 編集]

いいのではないですか、書いた後に設定しても(笑)

私はもみじさんの説明し過ぎない感じが好きです。
読む人がそれぞれ違う想像をしながら作品を楽しむって何か面白いですv-398

2008/02/23(土) 11:48:47 | URL | たぬき #osd7LS92[ 編集]

確かに、後から設定もありですね(笑)

昔から、私の書いた話は解釈や評価が割れます。
読む人にかなり依存した書き方をしているようで。

好きって言っていただけて、嬉しいです☆(笑)
2008/02/25(月) 14:50:38 | URL | もみじ #KKhd1Ueo[ 編集]
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2008/05/20(火) 01:06:49 | | #[ 編集]
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