白い月という球に

思うまま、わがままに。適当に書き連ねる、つくりものたち。 コメント・トラックバック歓迎です♪

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喫茶店で本を読んでいたら、声をかけられた。
顔を上げると、向かいの席に腰を下ろす人影。
彼女はこちらを見て、「久しぶりね」と口の端を持ち上げた。

「あんた、今何やってるんだっけ?」

彼女はアイスコーヒーを頼み、煙草に火をつける。
行動一つ一つが、洗練されている。
無駄がない。

「別に。……学生だよ」

私は答え、未練を残しつつ、本を完全に閉じてテーブルの端に置いた。
彼女は私の顔を覗き込む。

「ふうん。……あんた、ほんと、高校のときから変わってないわね。そこまで変わってないと、逆に尊敬するわ」

彼女は、大げさにため息をついた。
私から言わせてもらえば、彼女だって全然変わってなかった。

観客を意識した動き。
彼女は、常に舞台の上にいる。

私は高校時代の彼女に関する記憶を思い出し、軽く息を吐いた。

「鳥かごの鳥」

彼女は、私を見ながら歌うように口を開いた。

「鳥かごの鳥が、籠の外の世界を見下してる。そんな感じ。……憶えてる? あたしがあんたに前、言った言葉よ。言い得て妙だと、今改めて思うわ」

高校時代、彼女の私に対する執着ぶりは、ある種異常だった。
彼女は気付いていたのだろうか?
彼女を愛し、彼女を取り巻くどんな人に対しても、私に対するとき以上の熱を持っていなかったことに。

私に対するときにだけ、舞台から半分降りていたことに。

『鳥かごの鳥が、外の世界の何を知ってるって言うの? あんたの、その人を見下した態度、どうにかならない? あんたは一生、そうやって自分の世界に閉じこもっていればいいのよ!』

苦々しい気持ちで、思い起こす。
激しい剣幕でまくし立てた彼女に、私はただ笑って答えたのだ。

『うん、そうだね。そうかもねぇ。……ちえみちゃんは、きっと、一生そうやってみんなに囲まれながら、明るい舞台の上で生きていくんだね? 楽しそう!』

限りない、侮蔑をこめて。
彼女は、私の右頬を思い切り叩いた。

高校生だった私は、確かに鳥かごの中にいたのだ。
彼女が言ったように。
閉じた世界。周りなんか、見えていなかった。

「そうだね。そうだったかも」

私の言葉に、彼女はアイスコーヒーをストローですすりながら、少し意外そうな顔をした。

胸は痛む。
彼女に対して。
……私に対して。
哀れみ。
私たちみたいな人間の、人生は。

ああ、無知は強さだ。




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テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学
コメント

ご訪問ありがとうございました。
「鳥かごの中の鳥」ですか?
でたいのでしょうか?
出たくないのでしょうか?
考えさせられますね。
僕にはこのような文が書けません。
軽すぎるんですよ。
うらやましいです。
では、また。
2007/08/18(土) 11:55:43 | URL | 果報は寝て待て #-[ 編集]

コメント、ありがとうございます。

この二人は気に入っているので、今後、他の話にも登場させるかもしれません。
彼女たちの高校時代の話とか、結構激しそうですが書いてみたいかも…(笑)

良かったら、また遊びに来て下さいね~♪
2007/08/18(土) 13:59:29 | URL | もみじ #KKhd1Ueo[ 編集]
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