白い月という球に

思うまま、わがままに。適当に書き連ねる、つくりものたち。 コメント・トラックバック歓迎です♪

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「みんなで、物語を紡ごう!」コミュで、「迷路・鍵・雨」のお題で作ったもの。
なんか、いろいろ直したいけれど、ほとんど原型のまま載せます(苦笑)

でも、実は、結構気に入ってるのです。

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雨が、降る。
僕は傘を差し、しばし空想に沈む。

隣を歩く彼女が、あの時、僕にいった言葉。
その意味が、大人になった今でも、僕には分からないんだ。



「君は、迷路みたいね」
それこそ迷路みたいな裏道を、彼女の後をついて歩く。
小走りで一生懸命な僕を振り返って、彼女は猫みたいに笑った。

「迷路みたい」
再び前を向き、歌うように繰り返す。

僕たちは子供だった。
彼女は僕よりは大人だったけれど、でもやっぱり子供だった。
二人合わせても、世界を突き破ることなんて、できなかったんだ。

「……じゃあ、××ちゃんは?」
僕の上ずった声は、高い塀のさらに上の曇り空に吸い込まれた。
遠くで、雷。
二人分の足音は、僕たちの意思とは無関係なところで鳴っている。

「私は……私よ。ただの、子供だわ」
彼女は空を仰ぎ見た。
僕もつられて、上を見る。

鼻の頭にぽつんと、雨粒。

僕はリュックから、いそいそと母親の折り畳み傘を取り出す。
彼女に追いつき、差し出すと、彼女は驚き、そして泣きそうに笑った。

「ほんと……そういうところが」

彼女は折り畳み傘を開き、僕たちは二人並んで歩いた。
雨音は、柔らかく、僕たちを包んだ。



あれから時は過ぎ、彼女も僕も、大人になった。
僕たちは、今でもときどき、こうやって二人で会って、とりとめもない話をする。
お互い、いろいろと大事なものが増えて、別の世界を生きるようになった。

「迷路? ……ああ、確かにそんなこと言ったかも」
懐かしい、と彼女はくすくすと笑った。

「あれはねえ。あの頃、私、迷路が好きだったの」
それは知っている。
彼女は、大人が買うようなクイズの雑誌をいつも持ち歩いていた。
そして、暇を見つけては、鉛筆をもてあそびながら難しい顔をしていた。

……そう、いつだって、彼女は難しい顔をしていたんだ。

「迷路って、スタートからゴールまで行ける、正しい道が一本だけあるじゃない? で、それ以外の道は全部、行き止まりになってる。私は、その 正しい道が好きだったの。それを見つけるためだけに、迷路に没頭した。……少なくとも、あの頃のわたしは、頑張って、そう、思い込もうとした。で も……、でもね、本当は、どうしようもなく行き止まりに、心惹かれてたんだ」

「たくさんの、間違っている道。そこにとらわれる自分を、甘く空想した。だって、正しい道を通ったら、また次があるんだもの。また次の迷路で 、私はまた、ただ一つの正しい道を見つけなければいけない。それを見つけたら、また次」

「君は、迷路みたいだった。正しい道も、間違った道も、どちらも君の中に確かに存在していて、そのくせ、君は人懐っこい顔で私に笑いかける。 あの頃の君は世界を内包していた。私には、それが確かに感じられた。……でも、私はどう頑張っても、迷路を解く側のつまらない人間にしかなれなか ったの」




彼女は明るく笑った。
ビニール傘を通して見る空は、どこか期待に満ちていた。

「でも、今の君は鍵みたいだわ。うん、鍵!」
彼女は、さも楽しいことを思いついたかのように、弾んだ声を出した。



どうして、と訝しがる僕に、彼女は耳元でそっと、その心を囁いた。
くすくす笑う彼女に、僕は……ただただ、赤面するしかなかった。




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