白い月という球に

思うまま、わがままに。適当に書き連ねる、つくりものたち。 コメント・トラックバック歓迎です♪

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ボクはこんなことを考えている (角川文庫)ボクはこんなことを考えている (角川文庫)
(1996/03)
大槻 ケンヂ

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大槻ケンヂのエッセイ集。
いろいろ詰まってて、面白かった。

追っかけ少女たちに対する考察とか。
プロレスとか。

ほかの本も読みたい。


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テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌
「みんなで、物語を紡ごう!」コミュで、「迷路・鍵・雨」のお題で作ったもの。
なんか、いろいろ直したいけれど、ほとんど原型のまま載せます(苦笑)

でも、実は、結構気に入ってるのです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



雨が、降る。
僕は傘を差し、しばし空想に沈む。

隣を歩く彼女が、あの時、僕にいった言葉。
その意味が、大人になった今でも、僕には分からないんだ。



「君は、迷路みたいね」
それこそ迷路みたいな裏道を、彼女の後をついて歩く。
小走りで一生懸命な僕を振り返って、彼女は猫みたいに笑った。

「迷路みたい」
再び前を向き、歌うように繰り返す。

僕たちは子供だった。
彼女は僕よりは大人だったけれど、でもやっぱり子供だった。
二人合わせても、世界を突き破ることなんて、できなかったんだ。

「……じゃあ、××ちゃんは?」
僕の上ずった声は、高い塀のさらに上の曇り空に吸い込まれた。
遠くで、雷。
二人分の足音は、僕たちの意思とは無関係なところで鳴っている。

「私は……私よ。ただの、子供だわ」
彼女は空を仰ぎ見た。
僕もつられて、上を見る。

鼻の頭にぽつんと、雨粒。

僕はリュックから、いそいそと母親の折り畳み傘を取り出す。
彼女に追いつき、差し出すと、彼女は驚き、そして泣きそうに笑った。

「ほんと……そういうところが」

彼女は折り畳み傘を開き、僕たちは二人並んで歩いた。
雨音は、柔らかく、僕たちを包んだ。



あれから時は過ぎ、彼女も僕も、大人になった。
僕たちは、今でもときどき、こうやって二人で会って、とりとめもない話をする。
お互い、いろいろと大事なものが増えて、別の世界を生きるようになった。

「迷路? ……ああ、確かにそんなこと言ったかも」
懐かしい、と彼女はくすくすと笑った。

「あれはねえ。あの頃、私、迷路が好きだったの」
それは知っている。
彼女は、大人が買うようなクイズの雑誌をいつも持ち歩いていた。
そして、暇を見つけては、鉛筆をもてあそびながら難しい顔をしていた。

……そう、いつだって、彼女は難しい顔をしていたんだ。

「迷路って、スタートからゴールまで行ける、正しい道が一本だけあるじゃない? で、それ以外の道は全部、行き止まりになってる。私は、その 正しい道が好きだったの。それを見つけるためだけに、迷路に没頭した。……少なくとも、あの頃のわたしは、頑張って、そう、思い込もうとした。で も……、でもね、本当は、どうしようもなく行き止まりに、心惹かれてたんだ」

「たくさんの、間違っている道。そこにとらわれる自分を、甘く空想した。だって、正しい道を通ったら、また次があるんだもの。また次の迷路で 、私はまた、ただ一つの正しい道を見つけなければいけない。それを見つけたら、また次」

「君は、迷路みたいだった。正しい道も、間違った道も、どちらも君の中に確かに存在していて、そのくせ、君は人懐っこい顔で私に笑いかける。 あの頃の君は世界を内包していた。私には、それが確かに感じられた。……でも、私はどう頑張っても、迷路を解く側のつまらない人間にしかなれなか ったの」




彼女は明るく笑った。
ビニール傘を通して見る空は、どこか期待に満ちていた。

「でも、今の君は鍵みたいだわ。うん、鍵!」
彼女は、さも楽しいことを思いついたかのように、弾んだ声を出した。



どうして、と訝しがる僕に、彼女は耳元でそっと、その心を囁いた。
くすくす笑う彼女に、僕は……ただただ、赤面するしかなかった。




テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学
泣かない女はいない (河出文庫 な 23-1)泣かない女はいない (河出文庫 な 23-1)
(2007/10)
長嶋 有

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2007/11/24読了。


表題作と、『センスなし』の二つのお話が入っている。
自分でも何故かは分からないけれど、長嶋有の小説が好きだ。

樋川さんは、確かにかっこいい。
あまり登場しないけど、四郎の気持ちも痛いほどよく分かる。

『センスなし』はなんだかんだで、主人公強いな、という印象(笑)



テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌
ぬるい眠り (新潮文庫 え 10-13)ぬるい眠り (新潮文庫 え 10-13)
(2007/02)
江國 香織

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2007/11/23読了。


短編集。
『とろとろ』『災難の顛末』が、心に残った。

人の哀しさ。

彼女の本を読んで、いったい、どれだけの女の人が勘違いをして、嬉々として不幸の道を突き進んでいるのか、と思う。
もちろん、彼女に罪はない。

その子の性質から、これからの不幸を予測できてしまっても、私にできることはないんだな。
私が舵を取るわけにはいかないし、そもそも本人はそれを望まないだろう。


テーマ:読んだ本の紹介 - ジャンル:本・雑誌
君に届け 5 (5) (マーガレットコミックス)君に届け 5 (5) (マーガレットコミックス)
(2007/11/22)
椎名 軽穂

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2007/11/23読了。


爽子も好きだけど、くるみちゃんもかなり好き(笑)

「優しい」のと「優しくする」は、違う。
自分の存在を相手の隙間にねじ込むために、迷いのある人にひどく優しく接している人を見るとなんとも嫌な気分になる。
そういう人は、自分に依存してくれる人間を目を光らせて探している。
そういう人に捕まった人間は、ただ、駄目になる。

って、感想じゃないな。



テーマ:漫画の感想 - ジャンル:アニメ・コミック
すべては脳からはじまる (中公新書ラクレ)すべては脳からはじまる (中公新書ラクレ)
(2006/12)
茂木 健一郎

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2007/11/19読了。


ザッピングには、ちょうど良い感じ。
インデックスとして使えそう。
一つの話題が短くて、読みやすい。

茂木さんの本は、『脳と仮想』『ひらめき脳』とこれで三冊読んだ。
今は、『クオリア入門』を読んでいる。



テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌
ひらめき脳 (新潮新書)ひらめき脳 (新潮新書)
(2006/04/15)
茂木 健一郎

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2007/11/17読了。


いろいろと、興味深かった。
何かを頑張って思い出すのと、ひらめくのとは、似ているらしい。

この人は、私にとって、キーパーソンなのかも知れない。


テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌
ねこ鍋―みちのく猫ものがたりねこ鍋―みちのく猫ものがたり
(2007/10/25)
奥森 すがり

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2007/11/17読了。


写真の可愛さに負けて、購入。
いや、可愛いです。
読むところも、それなりにあります。


この人、写真撮るのも、上手いなぁ。

体質的に猫を飼うのは叶わないのですが、猫と一緒に暮らしたくなりました。


テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌
今週はなかなか、実生活が荒れております。
(学会等の経験がある方は分かると思いますが、今日これからポスターセッションなのです。今週は、実験とポスター作りとで死にかけてました……)

まぁ、それはともかく。
他の場所に本感想ブログを持っているのですが、なんとなくこっちに統合しようかな、と考えています。
FC2にも慣れてきたし。
商品紹介も簡単にできるし。
もともと、感想を書くのは苦手なので、いつも、ひとことふたことな訳ですが。

まぁ、見ている方にはあまり関係のない話かもしれませんが、書いておかないと忘れそうなので……(苦笑)
基本、不連続人間です。
そして、ここは自己満足ブログです(笑)


昨日は、久しぶりに8時間は寝たので、ばっちりです!(と信じたい……)


テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学
とりあえず、応募用のお話は、2-3年前に考えたものに決定。
どうせだから新しく考えよう、とか思うと、なかなか進まないので(笑)

今は、お話に関することを箇条書きでノートに吐き出している最中です。
登場人物とか、大まかな流れとか、入れたい台詞とか、終わり方とか、入れたいエピソードとか。
終わったら、この中から、取捨選択、和洋折衷、みたいな?(笑)


雪の季節のお話です。


テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学
というわけで、「小説 書き方」「小説 講座」で検索かけて、良さそうなページを片っ端からお気に入り登録してみた。
そういう勉強は、したことないし。
自己流ですからー。


……が、そのうち、だんだん、徐々に、読む気なくしていく自分。
うん、これは、たぶん読まないな。


とりあえず、書けば良いんじゃない?みたいな(苦笑)

結局、うまいのが書ければ通るし、書けなければ通らない、ってだけだと思うし。
ああだこうだは、現在の自分の精一杯の作品を生み出してからかな、と。


というわけで、進んだのか進んでないのかわからない本日でありました……。



テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学
なんとなく、最近、賞に応募してみようかなぁ、という気分になってきました。
調べてみたら、来年3月末締め切りで400字詰め50枚からオッケーなやつがあったので。



ネットは開けた場所であるはずなのに、私は閉塞感を覚えてしまうのです。
小説をネット上に上げることで、一体どこに繋がるのか。
(出口なんて存在しない迷路みたい。)

感想はもらえるでしょう。
誤字・脱字も、文法上の間違いも指摘してもらえるかもしれない。
また書こう、という気分になって、どんどん筆が進むかも。

でも、だから何?みたいな。

ある程度のレベルの人にとって、ここは上達の場になりうるのか。
「上」に行けるのか?
それとも、自分の作品を読んでくれてコメントしてくれる人がいる、というだけで満足なのか。

たくさん褒めてもらって、ランキングの上位に食い込んで、話題になって、書籍化とか?
そこまで行くのに、小説を書くこと以外のものに対してどれだけの労力と時間を割かなければならないのか。



とかとか、いろいろ考えて、「だったら、賞に応募すれば良いじゃん」とひらめいたわけです(笑)
今まで、実は考えたこともなかった。
だから、思いついてからは、ちょっとうきうきしてます。

というか、自分、時間ないとか言ってるけど、FC2関係にかけている時間を回せば50枚ぐらいは書けるんじゃ……ということに気付いたのもあって(笑)

なんか、賞に応募する、ってことを思いついた瞬間、脳みそが覚醒した感じ。
応募するからには通るものを書きたいし。
プロットなんて立てたことないけれど、試してみようかな、とか。

目的がはっきりしないと、動き出せない人なのです……。



応募まで漕ぎつけられるかは未知数ですが、過程が楽しければいいかな、と。
どうなることやら。


テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学
秋の夜長につれづれと。
今日のテーマは、「小説を書くのに必要なこと」。
つらつらと思いつきで書くので、あまり本気にしないで下さい(笑)

■物語を組み上げる力。
ストーリーを作る力ですね。
起承転結とか言いますが、べつにそんなのあまり気にしなくて良いんじゃないかな、と思う今日この頃。

■頭の中身を文章で表現する力。
描写ってやつですかね。
頭の中の映像を文章に書き起こす力。

■人間観察力。
大体の小説にはキャラクターが登場すると思うので、それなりに書こうと思うのならそれなりに必要とされる力。
デフォルメも鋭い観察眼あってこそ、だと思われ。
あと、基本的に、人は自分の心の声しか聞くことができないので、人の心の流れを描こうと思うのなら、どれだけ自分の心と向き合えるか、というのも重要かと。

■普通の観察力。
何を書くにも、日々の観察が結構大事だと思う。

■経験、知識。
他の人にない経験があると、やっぱり強みになると思う。
他の人と同じような経験も、違う視点で見られるのなら、それもやはり強みに。(観察力に通ずる)
知識もあればあるだけ良いと思うが、個人的には知識を面白く語れるようになるには、ある程度の経験が必要かと思われ。
頭でっかちっぽいのは、読む気がしない。

■演出力。
いかに、物語を見せるか。
同じストーリーでも、同じ文章力でも、見せ方によって面白さが変わる……んじゃないかなぁ。

■客観。
ジャンルにもよると思うけれど、普通にエンターテインメントとかは読者の目を気にしなきゃだと思う。

■個性を大切に。
他人と同じことを同じように書いていたら、できた作品の存在価値は、ないんじゃないかと思う。
まぁ、本人にとってはあるんだろうけど。
私個人としては、小さく無難にそれなりにまとまっている完成度の高い作品より、たとえストーリーに矛盾があっても、ご都合主義でも、作者の主張がうるさくても、パワーがあって書いた人の個性が爆発してる話のほうが読んでいて面白い。
……えっと、つまり、心に残る作品が好きってこと、かな。
別に、小さくまとまってても、どこかにきらりとするものがあれば良い。



あー、なんか、疲れた。
きっと他にもあるだろう、「小説を書くのに必要なこと」。



テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学
鍵は何事もなく、鍵穴にぴた、と密着した。
そのまま、がちゃり、と回し、扉を開放する。

中に入り、音を立てないよう注意深く扉を閉める。

息をつく。




桜野の部屋は、暗く、ひんやりとしていた。
窓からもれるわずかな光は、しんとした静寂を引き立てる。


私は脱いだ靴を手に持ち、部屋の奥へと入っていった。
部屋の中央に立ち、窓の外を見る。



携帯が、鳴る。
桜野から、メールだ。

油断していたから、一瞬、びくっとしてしまった。
電源を切っておかなければ……。



『あと15分で着くよ♪ レインは?』

『もう、先輩宅です。』
『オッケー♪ ぐっどらっく』



……軽く、脱力。
何が、ぐっどらっく、だ。

コンビニで買い物をしてもらっておいたビニール袋に、靴を半ば無理矢理に詰め込む。
袋は、どう見ても小さかった。

「…………」



まぁ、そういうこともある。
気を取り直して、ロフトへと上るはしごに手をかけた。


天井が近い。

ロフトには、綺麗にたたまれた毛布と、……その上には紙のようなもの。
ちょこんと、置かれていた。



   レインへ 

   また「そのとき」に。
   「そのとき」は、そのときが来ればきっと分かるから。  

                                      』



…………。

桜野は、普段はめちゃくちゃお喋りなくせに、メールとかメモとか文字で書くとなると、途端にかなり淡白だ。


それは、ある意味、やつの性格を良く表しているのかも知れない、と、ふと思う。

やつも、ピエロだから。




じっとしていると寒い。
桜野が用意した毛布に包まる。



「?」
メモの裏に何か書かれていることに、気付いた。


『追伸  寒いでしょうから、僕の愛情たっぷりな毛布に包まって身体を温めて下さいね』



……さすがの私も、毛布を投げ出して、身体を冷やすようなことはしなかった。

いや、寒かったから。







「……桜野零人のにおいがする」









透きとおった、夜の底。(17)を読む。


テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
夜の果てを知り、
僕らは少し、大人になった。
テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学
子供の頃から、鏡が苦手だった。
写真も、だ。

鏡の中の自分、写真の中の自分を見るたびに、私は思い知らされるのだ。
……自分の瞳に宿る、あまりにも致命的な空虚さを。





この後、桜野たちは、通り道のスーパーで買出しをする予定だ。
私は、その間に桜野の部屋に侵入し、ロフトに身を潜める。

桜野に指示されたことは、それで全て。
具体的にそこで何をするつもりなのか、やつは言わなかった。


そして、その作戦行動に伴い、桜野の部屋の合鍵も受け取っていた。


「レイン専用の鍵だから、返さなくて良いんだからね♪」という言葉とともに。

……作戦が終了した暁には、やつの部屋の郵便受けに強制投函しようと思う。
うん。それがいい。


桜野の部屋には、前にサークル仲間、何人かと押しかけたことがある。
場所は把握していた。





ぶらぶらと夜の道を歩きながら、私はまた空を見上げた。
子供の頃からの、癖みたいなものだ。

星たちの、しんとした光に心奪われる。
いつだって。

何度だって。



子供の頃と、一体、私の何が変わったというのだろう。

私は相変わらず、にこにこと「天使みたい」なピエロを演じている。
吐き気がする。



例えば、他人の痛みが分かる人を、心優しき人とするならば。
……その人は、なんて厄介な存在なのだろう、と思う。

他人の痛みを癒そうが、……他人の痛みにつけ入ろうが、結局、その傲慢な性質は変わらない。

そんなの、結果から見れば、他人の弱点をサーチして自分が優位に立とうとしているだけじゃないか。
たとえ、本人にその自覚がなかろうとも。


……いつかの笑顔。
よぎる。

私は、軽く、頭を振る。






「大丈夫だよ。心配しなくても、天使みたいなレインは、『ソフィア』にぴったりだから♪」

分かっている。
だからこそ、私は、拒絶する。









透きとおった、夜の底。(16)を読む。

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
「あー、飲んだ飲んだ♪」

火照った身体に、秋の夜の空気は切るように冷たい。

月が空の高いところに浮いていた。
その小ささが、遥かな距離を感じさせた。



「霧華ちゃん、霧華ちゃん、この後、何か用事ある?」

私の後ろで、桜野が切り出した。

「え……特にないです……が」
「じゃあさ、もし良かったら、この後うちで二次会やらない?」

少しの、間。

「えと、零人先輩が良いなら、是非……」
君島はためらいがちに、答える。
こちらを伺う、気配。


私はくるっと、元気良く、二人のほうを振り返る。
予定された動き、だ。

「良いですね、二次会! 朝までコースですか~?」

桜野は、私の言葉に口を尖らせた。

「んんー。レインは呼んでないもーん! 僕は霧華ちゃんと二人で飲み直したいの!」

「ええ~、桜野先輩、ひどいですね……。良いですよう、私、家に帰ってゲームしますから~」

君島の表情をちらっと確認し、からっとした笑顔を作る。

「じゃ、そういうことみたいだから、霧華ちゃん、気をつけてね? 変なことされそうになったら、ちゃんと声上げるんだよ? なんだったら、思い切り、殴っても良いし……」
「ちょっと、レインこそ、ひどくない~?」
「きゃははっ」

少し、離れる。

「それじゃあね、霧華ちゃん、今度は二人で飲もうね!」
「はい……鈴音ちゃんも、気をつけて……」
「レインも、ゲームばっかしてちゃダメだよ~♪」
「……大きなお世話です」


二人並んで、にこにこと、こちらに手を振る。

二人の視線を背中に感じながら、私はぶらりと自分の家のほうへ歩き出した。
やや覚束ない足取りを装いつつも、酔いは完全に醒めていた。


……君島が今日初めて、私の名を呼んだ。
頬を染めて、嬉しそうで、少しの優越感に近い感情が混じった表情に、胸がちくりと痛む。

霧華ちゃん、ごめん。



私は空を見上げ、心に冷え冷えとしたものを感じながら、今夜の計画を反芻した。
そう、夜はこれからだ。






透きとおった、夜の底。(15)を読む。

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
桜野零人と、私と、君島霧華と。

通されたのは丸いテーブルで、私たちはそれぞれが正三角形の頂点となった。
君島はミルク系のカクテルを、桜野はウィスキーの水割りを、私は焼酎ロックを持って、「初三人飲みを祝して」乾杯をした。



会は和やかに進行した。

「レイン、レイン、あれやった? あの、最近出た最新作!」
「あー、エイトですか? やってますよ! ヒロインめちゃくちゃ可愛いです!!」
「レインって、いつも、そういうとこばっかり見てるよね~」


「えと……服がとても凝っているゲームのことですか……?」

「そうそう! って、あれ? 霧華ちゃんもああいうゲームやるの~? すごい、意外だ……」
「ほんと! ゲーム馬鹿なレインならともかく、霧華ちゃんとRPGって、かなり異色な組み合わせかも♪」
「ゲーム馬鹿って、なんですか~」

「いえ、私じゃなくて……弟がやっているのを横で見ていました……」

「あー、霧華ちゃん、弟さんと一緒に住んでるんだもんね~。納得~」
「レインもさ、霧華ちゃん見習って、ゲームは僕に任せなよ! 僕が遊びに行くと、いつもレインばっかゲームやってるし~」
「別に、ゲームなら、自分のとこですれば良いじゃないですか」
「一人でやっても、つまんないもーん」

「お二人、とても仲良しさんなんですね……」
君島は、にっこりと笑う。

「ええー、全然そんなことないよ~。ねえ、レイン?」




…………。

会は、おおむね、和やかに進行した。

時折、微かな緊張が走る。
発生源は、君島霧華。


気付かない人は気付かないぐらい、ささやかな温度の変化。

……が、遺憾ながらそういうものに、私はとにかく敏感なのだ。
桜野も普通に、気付いているだろう。



この空気は、この場だけの話ではなく。
ここ最近、サークルの活動中でも、密かに繰り広げられている光景だったりする。

桜野が君島に話しかけられたときに、何も気にせず私に絡むのがいけない。




「僕的レッドゾーンに突入しちゃったから」

焼酎の残りを流し込みながら。
私は、昨夜の桜野の言葉を、じんわりと思い出していた。









透きとおった、夜の底。(14)を読む。

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
実は、結構、物書きさんがぐだぐだ語っているブログを読むのが好きだったりするので、自分も何か、書いてみようと思う。

話題は……小説の書き方とか?
このブログに載せているのは大体、小説とは言えない作品だと自分では思っているのだが、小説と呼べるようなものを書いていたこともある。
(というか、今も、時間的余裕、精神的余裕があるなら、書きたいのだけれど……)

初めて書いた小説は、横書きA4で19ページのもの。
完成まで、8ヶ月ぐらいかかった。
この作品は、「書かざるを得なかったもの」に分類される。
大げさでなく、私の精神の一部が宿っている。
あれを読めば、私は今でも、書いた当時の精神状態をある程度トレースできる。
当時の私は、あの作品を書かざるを得なかった。
だから、書いた。

私に日記をつけるように勧めてくれたのは、小学5年生のときの担任だった。
以来私は、実に十年以上、日記をつけ続けている。
それは、ある方向から見たら、軽く狂っているのだと思う。
日記をつける理由は人それぞれだと思うが、私の場合は、少なからず周りの人間への諦めの意味合いがあったからだ。
その日あったことや、考えたことを、周りの現実にいる人間に話すのではなく、ノートの向こうの自分を理解してくれる仮想の誰かに聞かせる。
加えて、当時の私のなかでは、フィクションとリアルの地位が逆転していた。
そういう子供だった。
「物書きは皆、狂っている」

話がずれた。

小説の書き方……。
「書かざるを得ないもの」
強制的なので、話の筋はすでに決まっている。
「書き出してみる」
会誌の締め切り前とか切羽詰っているときはとりあえず書き出してみると、既成事実の積み重ねでなんとなく話ができる。一人リレー小説のノリ。
「この台詞入れたい」
その台詞を入れるために奮闘する。
「こんな人出したい」
とりあえず、モノローグから入って、なんとなく話ができる。
「こういう終わり方……」
手を繋いで終わる、とかそういうのだけ決まってて、とりあえず書き始める。

その他いろいろ。
ダメだ、なんか、計画性のなさが浮き彫りに。
まぁ、別にそれで困らないし。


よし、目論見どおり、ぐだぐだな感じになった気がする……。



テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学
夢の中、妹はまだ子供で。
不機嫌そうな眉に、私はただ、胸を締め付けられた。


世界に一人きりだった私。
その隣で、
きっと妹も、世界に一人きりを噛みしめていたんだ。

私たちは姉妹だったから。
お互いを、知ろうともしなかった。

ただ、そこにいて。
ただ、そこにいた。

どうしようもなく寄り添って、
そして、その目は、全く別の方向を向いていたんだ。


夢の中、私はまだ子供で。
ただ、取り戻せない何かを、見つめていた。


テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学
彼女は、とても美しかった。

窓際で本を読む姿、それは全てのものを拒絶しているようで。
彼女の周りの硝子のように張り詰めた空気は、ただ、凛と鳴る。

その表情は無機質で。
それでいて、
内に秘められたあらゆる感情が奇跡のように拮抗して静止しているように、
僕には見えた。

誰もいない教室で声をかけた僕に、
彼女は色のない瞳を向ける。
その瞬間、僕を駆け巡った温かな血潮は。
期待は予感は歓喜は……!

僕は、なびく白いカーテンの海原で、暴力的に彼女の唇を奪う。
細い手首。
尚遠い彼女の瞳に、僕は終わりなき快楽を知る。
決して手に入らぬもの。
壊れぬもの。
どうして、こんなに心を惹きつける?

耳元で囁く甘言は、そのままの形で彼女に吸い込まれ。
彼女の中に降り積もり、彼女を成す一部となるだろう。
僕は、彼女に僕の証を刻み続け。

やがて。

堰が決壊し、彼女の女が目醒めたとき。
望み望まぬ、そのときには。

僕は微笑みながら、彼女に言うだろう。





「汚い」


テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学
なんだか、微妙に更新が滞っていますが、元気です。

ただ、今は、アウトプットよりはインプットしたい時期のようで。
小説やゲームやアニメを、ガンガン摂取しています。
ああ、幸せだ……。

どんなものかな、と思って、DSの文学全集を買ってみたり。
まだ、一作品しか読んでいませんが、意外と普通に読めた……。

あと、どうでもいいですが、PIYOを始めてみました。
メモ帳代わりに。
飽きるまでは、続けようと思います(笑)


週末、伸ばしすぎた羽をたたみきれなくて、本日遅刻しました(苦笑)
だめだ……。

テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学
『ソフィア』
その名を、初めて桜野の口から聞いたのは、いつだったか。
たぶん、合宿の前だ。



その日、桜野は私の部屋で、ごろごろ漫画を読んでいた。
私は桜野の存在を完全に無視して、パズルゲームに興じていた。
無言の部屋に、明るい電子音が響く。

私は、存分に、持ち前の集中力を発揮していた。


ふと気が付くと、桜野がいつの間にか無言で私の隣に座っていた。
体育座りだった。
そして、なんだか、やたらと近かった。




「……レイン、『ソフィア』って知ってる?」
桜野は、視線をテレビ画面に注いだまま、ぼそっと口を開いた。

私は仕方なくゲームを中断して、桜野に向き直りつつ距離をとった。


「『ソフィア』、ですか? なんですか、それ」
「んーと、組織、かな。なんというか、……うん、心優しき人々」

桜野の口調は、歯切れが悪かった。
目は相変わらず、止まった画面に固定されていた。


心優しき人々。
その言葉が、私の中でこだまする。
こころやさしきひとびと。


「レインは『ソフィア』の一員になる資格があると思う。……うん。今度、ターゲットが決まったら、またそのときに説明する」

そう言うと、桜野は一方的にその話題を終わらせ、玄関から帰っていった。




唐突に、一人になった部屋の中。
私は、最後にちらっと一瞬だけ私の顔を見た桜野の表情を、じんわりと引きずっていた。

その表情が、なんというか、いつもの桜野らしからぬものだったから、印象に残ったのだった。
口調も、いつもの桜野ではなかった。




……だから、断りそびれた。


心優しき人々。
私は、そんなものに、関わりたくなんてないんだってこと。


だって、桜野と私の共通の性質を考えれば、分かりきったことじゃないか。
『心優しき人々』が、どんな人々なのか。

具体的に何をする組織なのかは、分からない。
でも、根っこの部分は、分かりすぎるほど分かる。
思い込みかもしれない。

……でも、私の中には、静かな確信があった。



桜野が見せた最後の表情。
……あの、こちらを窺うどこか心細そうな桜野の表情を、なかなか頭から消去できなくて。


私は一人唇を噛んだ。








透きとおった、夜の底。(13)を読む。

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
静かな海に
漂うわたしは
だあれ

一体
どこから来て
どこへ向かうのか

あなたは知っているのかしら
それとも

知らないのかしら

自信も
傲慢も
同情も
嘲笑も
全部

全部切り捨てて
わたしは
この静かな海で


待ち望むきらめきはあの空からやって来て
やがてうつろなわたしに甘美な死のくちづけを

世界はただ、しんと静寂する。


テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学
明日から数日間、旅に出るので、
このブログの更新も完全に止まるんじゃないかと思われます。

無事に帰ってきたら、またよろしくお願いします~。

テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学
遠目に見ても、君島霧華がいつもより身なりに気を使っているのが分かった。
まぁ、彼女の場合、普段もかなりきちんとした格好をしているのだけれど。

その目は、ぼんやりと人々の往来に向けられている。




「じゃ、打ち合わせどおりにね♪」
小さく言うと、桜野は君島のほうへと駆けて行った。


ため息をつく。

……ここまで来たら、やるしかない、か。
私は覚悟を決めて、二人のほうへと向かった。



が。


「ごっめーん、待った?」
「いえ、今来たところです……」

走り寄った桜野に、君島は頬を赤く染め控えめに応える。
私の目の前。



…………。

……いや。
私、やっぱり、この人たちとは、本当は一瞬でも同じ場所に存在したくない。
うん。





「霧華ちゃん、こんばんは~」

近くに行って声をかけると、君島はきょとんとした顔でこちらを見た。
私を認識した、その瞬間。


「霧華ちゃん、今日も可愛い~。 なんか、この3人で飲むのって新鮮だ……。桜野先輩、ナイスです!」
「でしょ、でしょ。レインもそう思うでしょ? 絶対、楽しいと思うんだよね~♪ 僕、両手に花だし! ……あはは、霧華ちゃん、驚いてる驚いてる」


「え……と、すごくびっくりしました……」
君島は目を細め、にっこりと笑った。





……君島霧華が「天海鈴音」を認識した、その瞬間。

君島の顔に浮かんだその表情の意味するところは。
きっと、彼女自身も分かっていないんじゃないかと。


私は、気付かない振りをしたのだ。

いつものように。








透きとおった、夜の底。(12)を読む。

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
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