適当に時間を潰して、17時54分に時計台前に行くと、すでに桜野零人が待っていた。
昨日とは、また違う帽子をかぶっている。
……やつは一体、帽子をいくつ持っているのだろうか。
時計台とは言うものの、大学キャンパス内にあるその時計は、長い棒に文字盤がついただけのつくりをしていた。
ただ「時計」と呼べば良い感じなのだけれど、学生は皆「時計台」と呼んでいる。
これが、いわゆる、伝統というやつだろう。
「こんばんは」
私が声をかけると、桜野は思いっきり不満そうな顔をした。
「ちょっと、レイン? こういうときは、『待たせちゃって、ごめんなさいっ』ぐらい言ってくれないと……。僕が爽やかな笑顔で、『ううん、今来たとこ!』って言えないでしょ!?」
桜野は『待たせちゃって、ごめんなさいっ』のところを、よく分からない裏声を使って表現した。
もしかして、私の声まねか……?
「……そういう下らないことは、一人でやって下さい」
「えーー。これやりたくて、わざわざ早く来たのにいーー」
桜野は昨日と寸分違わず、ふざけたやつだった。
街中へと並んで歩きながら、私は桜野の計画を大雑把に聞いた。
とりあえず、これから君島霧華と合流するらしい。
…………。
「……先輩、一つお聞きしますが、君島さんは私が来ることを知ってるんですか?」
「えー、言ってないから、知らないと思うよ♪」
……やっぱり。
「それって、君島さん、普通に先輩と二人きりでデートするつもりで来るってことですよね?」
「……そうね。もしかしたら、そういうことになるかも♪」
恐る恐る言った私に、桜野は横目でこちらを見遣り心底楽しそうに答えた。
こいつ、絶対、わざとだ……。
これから執り行われる三人飲みのことを考え、私はいっきに、気分が重くなるのを感じた。
透きとおった、夜の底。(11)を読む。
昨日とは、また違う帽子をかぶっている。
……やつは一体、帽子をいくつ持っているのだろうか。
時計台とは言うものの、大学キャンパス内にあるその時計は、長い棒に文字盤がついただけのつくりをしていた。
ただ「時計」と呼べば良い感じなのだけれど、学生は皆「時計台」と呼んでいる。
これが、いわゆる、伝統というやつだろう。
「こんばんは」
私が声をかけると、桜野は思いっきり不満そうな顔をした。
「ちょっと、レイン? こういうときは、『待たせちゃって、ごめんなさいっ』ぐらい言ってくれないと……。僕が爽やかな笑顔で、『ううん、今来たとこ!』って言えないでしょ!?」
桜野は『待たせちゃって、ごめんなさいっ』のところを、よく分からない裏声を使って表現した。
もしかして、私の声まねか……?
「……そういう下らないことは、一人でやって下さい」
「えーー。これやりたくて、わざわざ早く来たのにいーー」
桜野は昨日と寸分違わず、ふざけたやつだった。
街中へと並んで歩きながら、私は桜野の計画を大雑把に聞いた。
とりあえず、これから君島霧華と合流するらしい。
…………。
「……先輩、一つお聞きしますが、君島さんは私が来ることを知ってるんですか?」
「えー、言ってないから、知らないと思うよ♪」
……やっぱり。
「それって、君島さん、普通に先輩と二人きりでデートするつもりで来るってことですよね?」
「……そうね。もしかしたら、そういうことになるかも♪」
恐る恐る言った私に、桜野は横目でこちらを見遣り心底楽しそうに答えた。
こいつ、絶対、わざとだ……。
これから執り行われる三人飲みのことを考え、私はいっきに、気分が重くなるのを感じた。
透きとおった、夜の底。(11)を読む。






