白い月という球に

思うまま、わがままに。適当に書き連ねる、つくりものたち。 コメント・トラックバック歓迎です♪

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湯気に溶ける浴室

夏の記憶
蝶の輪郭
遠く、湖

空越しの宇宙
残酷な鈍感
死の花

濡れたレール
金魚の見る世界
メリーゴーランドの入り口

ポケットに入ったチョコレートの代わりに手放したもの
その感触

鳴るのは電話
答えるは私
私の声

静かにしてください
低く、重い
どうか、喋らないで

目をつむり、手を引かれ、漂う私の影は
結局、何者にもなれず
息を止めた


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テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学
夢を見た。
カーテンの隙間からやわらいだ空を見る。
それでも、金属的に硬い空のいろ。
西の山脈は、紅く燃えている?
ひたひたと胸を満たす夢の残滓は、「幸福」みたいな顔をして私の孤独に触れる。
そうして、私は「幸福」みたいになった孤独を、舌の上で転がす。

孤独は相対的なものである、ということを私は知った。
それは冬の夜明けの空気よりは温かいから。



テーマ:つぶやき - ジャンル:小説・文学
緑の丘の上に、立方体が突き刺さっている。
それは、巨大なサイコロだった。

生暖かく湿った風が、頬を撫でる。
草木は揺れる。
髪をもてあそぶ。

遠くで鳴る雷。
微かな振動。
大地のぬくもり。

灰色の空を形作る雲は、激しく流れゆく。
私の中の細胞一つ一つが、ばらばらになろうと、自由になろうと、もがく。
私は微笑み、ただ、微笑み。

いちばん最初の雨が私を呼ぶから。
私はその箱を殴り殺した。

響く、声。
伸びる声。






テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学
窓に映ったつり皮は、規則正しく揺れる。
窓に映った私は、つまらなそうに口を結ぶ。

真夜中、空っぽのその箱がひっそりと息を殺している姿を思うと、私は切なくて。
どうしようもなく切なくて、呼吸を止める。
そうして、ものになろうとする。

地下鉄には、朝が来ない。
夜だけ。
ただ夜だけが、永遠に続く。

私にとっての真夜中は、彼らにとってはただの夜で、
それは永遠のうちの一瞬でしかないのだろう。
空っぽでじっとしていることすら、彼らにとっては繰り返される日常の一部に過ぎないのだ。

唐突に吐き出された私は、あてもなく夜の街をさまよう。



テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学
夜はブランコのように、寄せては返し、寄せては返し。
無限の静寂は果てることなく、ただ影になった少女たちを引き連れて。

きい、きい、きい、きい。
きい、きい、きい、きい。

白い闇は、優しく肌をなでるのです。
優しく、優しく、深海魚のぬくもりのような優しさで、私の肌をなでまわすのです。

そこにあるのは、朽ちかけた母親。
恨めしそうな表情で、ぱくぱく。ぱくぱく。私には何も、聞こえ、ない。
濁った眼球。歪んだ過去の記憶を映し出し。
不自然に赤い口紅だけが、私を不快にさせるのです。

きい、きい、きい。
きい、きい、ききい。

ブランコから飛び降りた足音は、まっすぐに帰るようです。
私もまっすぐに帰ります。
まっすぐ、帰ります。

鈍く重いこの体、どこに捨てようか。
どこに捨てて帰ろうか。

幾重にも連なるブランコは、鉄のにおいをまき散らし、
この私をすくい取るというのです。








テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学
小さな花が咲きました。
私は誰にも見つからないように、そっと隠します。
小さな花は、やがて、たくさんの花を呼び覚ましました。

「私の中で乱れ咲く花たちは何を望む?」

とても可愛らしい花です。
私はその丘で目をつむって、風に揺れる億千の花たちのささやきを聞きます。
さわさわ。
さわさわ。
私の胸に静かな不安が広がっていきます。
それは、真っ赤な色をした不安です。

私は目を開き、急いでその丘への道を閉ざしました。

さわさわと、花たちは私にささやきます。
それは、幸せへの階段なのだと。
孤独からの脱却なのだと。
ああ、さわさわ、さわさわと、花たちは私にささやき続けるのです!

あなたは私が狂っているとお考えですか?
小さくて可愛い花たちのささやきに耳を貸そうとしない私を、おかしいと笑いますか?
私には見えるのです。
幸せそうに笑う私が。もはや私ではなくなっている私が満ち足りた様子で歩いて行く様子が。
この目にはっきりと!

勘違いしないでください。
変化を恐れているのではありません。
違うんです。
これは、強制終了です。
私は私が私でなくなることに耐えられないだけ。
そう思うことは、異常でしょうか? 異常なのでしょうか?

小さな花たちは、少しずつこちらに浸食してきています。
私は必死で耳を塞ぎます。

それでもかすかに聞こえる花たちのささやきは、
ああ、こんなにも耳に心地よく。

「私の中で乱れ咲く私は何を望む?」


赤。





テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学
絶望の深さに魅せられて、私はにっこりと微笑む。
生きてるんだ、って思った。

*

子供の頃、近所の男の子とした鬼ごっこみたい。
蛇行しながら全速力で、でも鬼に捕まってしまう、その前の引き伸ばされた一瞬。
どうしようもない、という諦めの中にきらりと光る甘美な予感。

私は気付いてる。
鬼に拘束されたい、と願う自分の存在に、本当は気付いてる。
希求。
狂おしいほどに。
私は。
その姿を思い描き、何度も何度も。
思い描いて。
私は。

否定から始まる命だってあるの。
人は皆、愛されながら生まれて来ただなんて、
そんなこと本当は信じてないんでしょう?

でも、ほら、彼らは私たちを待ってる。
優しく目を細めて、手招きしてる。
胸の温かさを、私は知る。
この涙の温かさを、私は初めて。

ありがとう、と。
生まれてきたことに感謝を。
心はこんなに澄み切って。
今だったら、「私」の意味もわかる気がするの。

*

「絶望」は鋭くなりきれない人が名付けた、行き止まり。
その壁を壊した向こうに何があるのか、
君は知ってる?



テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学
しなないさかなは、きもちわるい。

十子(とおこ)は小学校から帰ると真っ直ぐに金魚鉢の前へ向かう。
金魚鉢は畳の上に直に置いてあり、十子はうつ伏せになって両肘で頭を支えながら金魚鉢を眺める。
そうして、夕ご飯の時間に母親に呼ばれるまで、じいっと、金魚を見つめているのだ。
この間の夏祭りで十子がすくった二匹の金魚。
水の中を涼しげにゆったりと舞う。
十子は毎日その金魚の死だけを、ただ待ち望む。

「死なない魚は、気持ち悪い」
十子は言う、お祭りの金魚は死ななければならない、と。
「そうじゃなきゃ、落ち着かないの。お祭りがまだ続いてるみたいで、落ち着かない。怖いの、何かがわたしを迎えに来るような気がして」
こんなところにいる魚は死んでいなくてはならない、と十子は二匹の金魚を見つめながら言う。

周りの大人から神童と呼ばれ、たくさんの人間の生々しい視線にさらされている十子は、それでも毅然として綻びなく日々の生活を送っている。
愚かにならず、周りの人間に対して媚を売ることなく、ただ彼女にあらかじめ組み込まれたペースで彼女は生きる。
田舎の小さな町だ。
夏祭りで十子は他の子供と同じようにヨーヨー釣りを、わたあめをねだる。
毎年、祭りから家に戻った瞬間に、興味を失われ放っておかれるそれらの品々のすべてを僕が回収することになる。
彼女は金魚が死ぬのを静かに待っている。

(彼女は自分がこの町を出ていく日を静かに予感している。)

十子は毎日午後六時きっかり、金魚にえさを与える。
「ご飯をあげないのはだめ。ご飯をあげてても、死ななくちゃいけない。確かにこれは水だよ、でもこんな少しなのは水じゃないの。たくさんなきゃ水じゃないの。だからこんな少しの水で満足してちゃだめなんだ」
……満足しないで、死ぬべき?
十子は大きく頷く。

ある日、金魚が一匹、死んだ。
十子は泣いた。
金魚鉢の中にひとつまみの悲しみもない、と泣いた。
過度に潔癖で、単純化されたその世界の中で、死は何の意味も持たなかった。
一匹になった金魚は、二匹でいたときよりもずっとずっと、自由に世界を舞う。

死なない魚は、気持ち悪い。
でも、わたしは、この世界を生きていかなくてはならないの。





テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学
白い鳥が一羽、飛んでいく。
残像は明滅を繰り返し、やがて消える。

足元を洗う水は透明で、僕の色彩の全部を吸い上げるかのような、肌触り。
僕は笑う。

いつかの日に期待したものたちは、今、こぞって僕の前にひざまずく。
まるで、初めて会ったかのような様子で。
彼らが忘れてしまった僕は、今、小鳥と遊んでいるんだ。
燃えてしまったあの森で、今も。

大人になって、完璧に笑えるようになればなるほど、僕の色彩は澄み切って諦めを増していく。
水面は凪ぎ。
他のものを寄せ付けない。
二度と、寄せ付けない。

森の中の僕は、はじけるように駆け出した。
僕も知らない森の奥に、何かを見つけたのかな。

僕はひとり、空を仰ぐ。
確かな予感が胸を満たす。

白い鳥が一羽、






テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学
『地球最後の一日。』を小説風味にバージョンアップさせました。
久しぶりにまじめに書いた気がする……。
ちゃんと終わらせるのって、やっぱ大事だなぁと思ったり。
気が向いたら、更なるバージョンアップを。

一字下げ、うまくいってないかも。すみません。

******

『地球最後の一日』


 太陽が海の向こうから、ゆっくりと顔を出す。
 裏山に登って朝日を見るのなんて何年ぶりだろう。小学生の頃は何かある度にいつも裏山のてっぺんまで登って下に広がる町並みを眺めたものだ。夏休みは毎日と言っていいほど裏山で夜明けを迎えた。
 ――なんだか、お日様が僕のためだけに昇って来てくれるような気がしたから。
 繋いだ右手に力を込める。ぎゅっと握り返される。
 僕たちは無言で、新しい太陽を、きらきら光る海を、生まれ育った町を、息を止めて見つめた。
「綺麗ね……」
 彼女の言葉に僕はただ頷く。ああ、世界はこんなにも喜びに満ちている。
「ありがとう」
 凛とした声。彼女は僕に微笑む。僕も負けじと笑い返す。服が汚れるのも構わず二人して地面に寝転がり空を仰ぐ。
 泣くかと思ったのに。悲しいかと思ったのに。
 今、僕らはこんなにも満ち足りている。僕たちは、麻痺してしまった? 深い絶望に、頭の線が一本切れたのかもしれなかった。でも、今の僕らにとっては、そんなことどうでも良かった。
 空の高いところに白い月がぽっかりと浮かぶ。手を伸ばす。僕たちの足では決して届かない、その遠さを思った。

 今日、地球は滅びるらしい。



 気づいたときにはもう手遅れだった、と科学者は言った。
 その発表はちょうどひと月前、全世界に生放送された。
 今でも覚えている。僕は久しぶりに大学時代の友人の家で飲んでいた。サッカーの試合の途中だった。一緒に飲んでいた奴がニヤニヤしながら僕の顔を見る。でも、その瞳は微かな不安に揺れて。
「この地球上の誰も、予測することができなかった。――地球は、ひと月後に滅亡します。それを避ける術を、今の人類は持ち合わせていない」
 僕たちは無言だった。
 僕はぐるぐると混乱した頭で、ただ、サッカーの試合の行方を気にしていた。きっと、他の奴らも同じようなものだったろう。そこには、現実感というものが全くなかった。欠如していた。
 テレビ画面の向こう、他の人が皆どうしようもなく悲痛な面持ちをしている中、最初に発表をした科学者だけは終始静かに微笑んでいた。
 友人の家からどう帰ったのか、僕は覚えていない。ただ、時間が経つほどに増していくリアリティが僕らを押し潰していった。僕らは酒をあおった。

 その放送の後、例の科学者はメディアに散々、不謹慎だとかで叩かれていたけれど、今の僕は彼の気持ちがなんとなく分かる。僕も大学時代は科学に身を捧げていた人間だから。
 この世界の真理を追求したい彼は、同時にこの世界に圧倒されたいと思っている。決して自分にはかなわない、と思い知らせてほしいと思っている……。
 あの発表のあった直後こそ、殺人やら強盗やらいろいろ起こったけれど、『その日』が近付くにつれて世界は平穏を取り戻していった。きっと、科学者だけじゃない、世界中の人々が世界に抱かれている感覚、神様が見てくれているという感覚を覚えていたのだろう。
 科学信仰は終わりを告げ、人々は言葉にできない、見逃してきた多くのものに価値を見出し始めた。



 僕はというと、多くの人の例にもれず発表直後にはかなり荒れた。いろんな人に当たり散らす毎日。会社の上司に向かって「死ね」と言ったこともある。
 死にたくなくて、死ぬのが怖くて、布団の中で泣いて、約束されていたはずの未来を思い描いては絶望に打ちのめされ、やり場のない怒りに拳を震わせた。浴びるほど酒を飲んだ。
 でも、ふとした瞬間に、思い出したのだ。
 小学生だった頃の僕を。かつて、確かに存在した僕を。ここではない、どこかに焦がれていた僕を。

「もしも、あと一年の命だったら、きっとそのまま普通に生活するだろうな」
「もしも、あと三ヵ月の命だったら、お年玉の貯金を使って欲しいおもちゃを好きなだけ買おう……」
「もしも、あと一日の命だったら……」
 あの頃の僕はいつだって、空想の翼をはばたかせて現実を見ないようにしていた。それは無意識だったけど、無意識だったからこそ、すぐ隣にあった死線に引っ張られることもなかった。
 あの頃の僕には、繰り返していく灰色の日々が永遠に続いていくように思われたんだ。逃げ道なんてなかった。ただ、周りの何もかもが僕への興味をなくしてどこかに行ってくれればいいのに、ってそればかりを考えた。
 明日が来ないようにと祈りながら眠りにつく毎日。自分が大人になる日が来るなんて、想像もつかなかったんだ。

 今、ここに子供の頃の僕がいたら、この状況に間違いなく目を輝かせていたことだろう。周りの大人たちに「ほんと? ほんと?」と聞いて回ってうるさがられただろう。
 それに対して、今の自分はどうだ? 死にたくない、死にたくない、ってまるで子供みたいに駄々をこねて。精神年齢、下がったんじゃないか? あの頃の僕に笑われるぞ。
 ――でも、ああそうか、って。
 呆れたのと同時に思ったんだ、ああそうか、ぼくは幸せになったんだ、って。死にたくないと思うぐらい、幸せに。
 その瞬間、世界は色を取り戻した。むしろ、前より鮮やかなくらいだった。
 僕は笑いながら泣いた。



 昇り切った太陽が、じりじりと僕らを焼く。
 繋いだ手は汗ばんで、もはやどちらの汗かなんて区別もつかない。半袖の腕にくっついた砂だって、もう僕の一部かも知れなくて。
 地球は、回る。
 彼女が僕の頬をつつく。僕もつつき返す。僕たちは笑いながら転げ回る。きっと頭の線はすでに何本も切れているんだろう。手遅れだ。だからなんだって言うんだ。
 終わりがあるからこその、幸せを。

 久しぶりに連絡を取った母親は苦笑して、なんとか用意しておくから帰ってくれば、と小さく言った。声が震えていたことには気づかないふりをしよう。どんな顔をして迎えてくれるんだろう。
「もしも、あと一日の命だったら……、桃の缶詰を百個食べたいです!」
 どこかで、僕が笑った気がした。













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